宇宙飛行士でひとり親の母と、幼い娘のロケット打ち上げまでの日々を描いたのは、『裸足の季節』の脚本が絶賛されたアリス・ウィンクール監督。自身も幼い子供を持つ彼女が、宇宙飛行士という特殊な環境で働く母親と、その子供との特別な関係に焦点を当て、お互いを想い合うあまりぶつかり合い、愛しさも寂しさも経験し成長していく親子の物語を誕生させた。撮影は欧州宇宙機関(ESA)の協力により、ドイツ、ロシア、カザフスタンの関連施設で敢行。宇宙飛行士の知られざる世界をリアリティあふれる映像でスクリーンに表現した。母サラを演じたのは、実写映画『ダンボ』や、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』で、子供から大人まで世界中の観客を魅了したエヴァ・グリーン。娘のステラは約300人の中からオーディションで選ばれたゼリー・ブーラン・レメル。チームリーダーの宇宙飛行士にマット・ディロン等、欧米の実力派俳優が集結。さらに、音楽は世界で活躍する坂本龍一が担当した。
フランス人宇宙飛行士のサラ(エヴァ・グリーン)は、ドイツの欧州宇宙機関(ESA)で、長年の夢だった宇宙へ行く事を目指して、日々訓練に励んでいる。物理学者の夫トマス(ラース・アイディンガー)とは離婚し、7歳の幼い娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)と2人で暮らす彼女は、「プロキシマ」と名付けられたミッションのクルーに選ばれる。大喜びのサラだったが、このミッションに旅立てば、約1年もの間、娘と離れ離れになる。ステラを残し宇宙へ飛び立つまでに2ヶ月しかない。過酷な訓練の合間に、娘は母と約束する「打ち上げ前に2人でロケットを見たい」と。母は約束を果たし、無事に宇宙へ飛び立てるのか。
フランス・パリ生まれ。母は『雨の訪問者』(70)で知られる女優マルレーヌ・ジョベール。ベルナルド・ベルトルッチ監督作『ドリーマーズ』(03)で映画デビュー。作品がデザイナーのジョルジオ・アルマーニの目に留まり、エンポリオ・アルマーニのモデルにも起用された。リドリー・スコット監督作『キングダム・オブ・ヘブン』(05)のヒロイン役をきっかけにハリウッドへ進出。続いてダニエル・クレイグ主演『007/カジノ・ロワイヤル』(06)でボンドガールを務め、世界的に注目を浴びた。同年には、英国アカデミー賞でライジング・スター賞も受賞している。またティム・バートン監督のミューズとして『ダーク・シャドウ』(12)、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(16)、『ダンボ』(19)と多数の作品に出演。近年の出演作に、ロバート・ロドリゲス監督作『シン・シティ 復讐の女神』(14)、マッツ・ミケルセン主演『悪党に粛清を』(15)、ロマン・ポランスキー監督作『告白小説、その結末』(17)がある。本作では、セザール賞主演女優賞にノミネートされた。
フランス生まれ。『Des morceaux de moi(原題)』(12)(訳:私のかけら)で映画初出演。本作への出演は大規模なキャスティングオーディションで約300人の中から選ばれた。監督のアリス・ウィンクールから「ゼリーにはエドワード・ヤン監督作『ヤンヤン 夏の想い出』(00)の少年のような瑞々しさを感じた。」と絶賛された。主演のエヴァ・グリーンとは熱心にリハーサルを繰り返し、本作に臨んだ。
アメリカ・ニューヨーク州生まれ。高校在学中にキャスティング・ディレクターにスカウトされデビュー。78年『レベルポイント』で映画に初出演。その後、フランシス・フォード・コッポラ監督の青春映画二部作『アウトサイダー』、『ランブルフィッシュ』(共に83)に不良少年役で出演、マーロン・ブランド、ジェームズ・ディーンの後継者として注目される。ガス・ヴァン・サント監督の『ドラッグストア・カウボーイ』(89)ではインディペンデント・スピリット賞の主演男優賞を受賞。また『イン&アウト』(97)、キャメロン・ディアス主演の『メリーに首ったけ』(98)等のコメディ、サスペンス映画『ワイルドシングス』(98)に出演するなど、幅広いジャンルで活躍。『クラッシュ』(04)では、米国アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、インディペンデント・スピリット賞と多数の映画賞で助演男優賞にノミネートされた。また、『シティ・オブ・ゴースト』(02)では、監督・脚本・主演を務めた。近年の出演作にM・ナイト・シャマラン監督・制作総指揮のTVシリーズ「ウェイワード・パインズ 出口のない街」(15)、ラース・フォン・トリアー監督作『ハウス・ジャック・ビルド』(18)がある。
ドイツ・ベルリン生まれ。映画出演だけでなくドイツのテレビドラマでも活躍している。フランスの巨匠オリヴィエ・アサイヤス監督作品『アクトレス ~女たちの舞台~』(14)、『パーソナル・ショッパー』(16)で世界的に知られるようになり、2016年にはクリス・クラウス監督『ブルーム・オブ・イエスタディ』(16)でドイツ映画賞にノミネートされた。主演のエヴァ・グリーンとはティム・バートン監督作品『ダンボ』(19)でも共演している。近年の出演作にテレビ映画『SS-GB ナチスが戦争に勝利した世界』(17)、テレビドラマ「バビロン・ベルリン」(17)、映画では『マチルダ 禁断の恋』(17)、『ハイ・ライフ』、『カット/オフ』(共に18)がある。
ドイツ・テューリゲン生まれ。舞台女優としてキャリアをスタートし、2006年までドイツ各地で行われた数々の舞台に出演。2015年にはドイツで最も歴史があり、重要な美術院でもあるミュンヘン美術院に入会を許された。映画デビューは『レクイエム~ミカエラの肖像』(05)で、この作品でベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)、ドイツ映画賞最優秀主演女優賞の他、多数の賞を受賞した。続く『Uber uns das All(原題)』(11・未)でもドイツ映画賞、ドイツ映画批評家協会賞にて主演女優賞を受賞。ドイツを代表する女優のひとりである。近年の出演作に『ピノキオ』(13)、『ありがとう、トニ・エルドマン』、『希望の灯り』(共に18)があり、『ありがとう、トニ・エルドマン』では、ヨーロッパ映画賞、トロント映画批評家協会賞、バイエルン映画賞で主演女優賞を受賞した。




1976年フランス・パリ生まれ。フランスの名門映画学校、フランス国立映像音響芸術学院を卒業後、短編映画『Kitchen(原題)』(05)を監督。さらに2作の短編映画『Magic Paris(原題)』(07・末)、『Pina Colada(原題)』(09・末)を制作した。長編映画デビューは『博士と私の危険な関係』(12)。続いて『君と歩く世界』(12)のマティアス・スーナールツと『アンノウン』(11)のダイアン・クルーガー共演のサスペンス『ラスト・ボディガード』(15)を監督、トロント国際映画祭にて上映された。また『裸足の季節』(15)では監督のデニズ・ガムゼ・エルギュヴェンと共同で脚本を担当し、セザール賞最優秀脚本賞を受賞した。
1952年東京生まれ。1978年「千のナイフ」でソロデビュー。同年YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)を結成。散開後も多方面で活躍。大島渚監督作『戦場のメリークリスマス』(83)で英国アカデミー賞を、ベルナルド・ベルトルッチ監督作『ラストエンペラー』(87)の音楽ではアカデミーオリジナル音楽作曲賞、グラミー賞、他を受賞。常に革新的なサウンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。 環境や平和問題への言及も多く、森林保全団体「more trees」の創設、「stop rokkasho」、「NO NUKES」などの活動で脱原発支持を表明、また「東北ユースオーケストラ」を立ち上げるなど音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動も行っている。 2013年に山口情報芸術センター(YCAM)10周年事業のアーティスティック・ディレクター、2014年に札幌国際芸術祭2014のゲストディレクターに就任、2018年にはソウル(韓国)に完成したアートスペース「piknic」において複数のサウンドインスタレーション作品を展示した「Life, Life」展を開催し6万人以上を動員するなど、アート界への越境も積極的に行っている。 2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが、2015年、山田洋次監督作『母と暮せば』(15)とアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督作『レヴェナント:蘇えりし者』(15)の音楽制作で復帰を果した。2017年春には8年ぶりとなるソロアルバム「async」を、同年末よりICC(東京)において新作のインスタレーション「IS YOUR TIME」を発表。その後も多数の映画音楽制作を手掛けるなどハイペースの活動がつづいている。
きっかけは8歳の娘と、幼き日の憧れ
宇宙飛行士が主人公の映画はこれまでにも幾つか製作されているが、本作のように女性宇宙飛行士と、その娘との親子の絆を主軸にした作品は今までにない。監督のアリス・ウィンクールは、「私が過去に手掛けた作品すべてに言えることですが、この題材に強く惹かれたのは自分の中にあるプライベートな感情によるものです。今回の場合は“宇宙”と“親子関係”になります」と明かす。続けて、「私にも8歳の娘がいるせいか、自分と同じ子供のいる女性宇宙飛行士たちの親子関係について、特に心惹かれるものがありました。母と娘が離れ離れになるプロセスを、地球を離れる宇宙飛行士に重ねて探求したいと思いました」と、製作の経緯を振り返る。また、宇宙に関しては幼い頃から興味を持っていたという。「幼い頃から宇宙に関連する本を沢山読み、それらに魅了されてきた事が本作を製作しようと思った理由のひとつです」。
二人の宇宙飛行士との出会い
本作の舞台は欧州宇宙機関(以下ESA)。監督のアリス・ウィンクールはその理由について説明する。「宇宙に関してはアメリカのNASAが舞台の映画が多いですが、私は自分のベースでもあるヨーロッパを舞台に作りたいと思いました。本作はESAの全面的な協力のもとで製作を進めることが出来ました」。脚本を執筆するにあたり監督はまずESAへ赴き、施設に滞在させてもらったという。そこで2人の宇宙飛行士に会った。監督が続ける。「当時はフランス人宇宙飛行士、トマ・ペスケ*が初飛行の準備中で、彼ともう一人のフランス人初の女性宇宙飛行士であるクローディ・エニュレにお会いすることが出来ました。二人とはその後の脚本執筆中も定期的に連絡を取りあっていました」。本作では、毎日過酷なトレーニングをこなす主人公サラの様子が印象的だ。この点について監督は、宇宙飛行士たちの姿をよりリアルに見せることにこだわりたかったからだ、と語る。「ESAで宇宙飛行士を訓練するコーチと会い、次に訓練施設を訪問して色々な話を聞きました。そこで宇宙飛行士たちが地球を離れるために、どれ程の労力と時間をかけるかを目の当たりにしました。過酷なトレーニングの描写が多いのは、彼ら宇宙飛行士たちの生活をドキュメンタリーのようにリアルに見せたかったからです」。
注)*2016年11月17日~2017年6月2日に実施された「プロキシマ・ミッション」でフランス人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)に6カ月間滞在。2021年4月に打ち上げ予定のアメリカ・スペースX社開発の有人宇宙船「クルー・ドラゴン」運用2号機に、欧州宇宙機関の宇宙飛行士として初搭乗する。同船には日本人宇宙飛行士の星出彰彦氏も同乗予定。
最高のキャスティング
主人公のサラ役に、エヴァ・グリーンを起用した理由について監督は次のように説明する。「私はサラをただ娘と離れて悲しむような母親には見せたくなかった。だからエヴァが持つ、アクション女優としての素質、エッジの効いた強さに惹きつけられたのです。そして、ティム・バートン監督作品にも違和感なくはまる独特の雰囲気、型にはまらないところに魅力を感じました」。また監督は彼女が偶然にも宇宙マニアである事を明かした。「私が出会ったすべての宇宙飛行士が、なんらかのマニア気質を持っていました。そして、エヴァも宇宙のオタクでした」。実際の宇宙飛行士と思わぬ共通点が見つかり、主演のキャスティングはベストな形で進んだ。サラを演じたエヴァ・グリーンは、本作への出演を決めた理由を明かす。「脚本を読んで宇宙飛行士の仕事への情熱と、娘への愛の間で葛藤する女性を上手く表現していると感じました。その緊張感と心のせめぎ合いに心を惹きつけられました」。エヴァはさらに続ける。「宇宙飛行士は人々を魅了する職業でありながら、彼らの仕事や生活についての多くはほとんど知られていません。この物語は現代的でありながら、人間味もあり、ドラマがあります」。
300人の中から選ばれたゼリー・ブーラン・レメル
本作のもう一人の主人公ともいえるサラの娘ステラ役を選ぶにあたり、監督のアリス・ウィンクールはいくつか条件をあげていた。「自ら行動することができ、エヴァと相性が良く、撮影クルーと共にロシアとカザフスタンに滞在できる子役が必要でした。そうして約300人の中からゼリーを選びました」。監督はゼリーの魅力を次のように話す。「ゼリーを最初に見たとき、エドワード・ヤン監督の映画『ヤンヤン 夏の想い出』(00)に登場する少年を思い出しました。彼女は型にはまらない子供でした。そして、エヴァと同じくオタク気質な所があります」。監督は、サラ役を演じたエヴァ・グリーンとの親子の絆を演出するにあたり、撮影に入る前にエヴァとゼリーと2人で会う機会を設けた。エヴァは、当時のやりとりを打ち明ける。「ゼリーと会う機会を何回か設けて貰ったおかげで、お互いをよく知る事ができ、本物の親子のように信頼と絆を育む事ができました。ゼリーとは熱心にリハーサルも繰り返しました」。
宇宙から帰還したとき、そよ風や緑の香りに感動しました。
当然のようにある空気や、身近にいる家族も、決して当たり前ではなく、とても有り難いと。
完璧な宇宙飛行士なんていない。完璧な親も。
周囲に支えられていることに感謝し、子供も大人も葛藤しながら成長していくのだと、
心を照らす星は、案外身近に、当たり前と見過ごしてしまいそうな中にあるのだと、気づかせてくれる映画です。
山崎直子
宇宙飛行士
※以下アイウエオ順
子供に対する想いを抱えつつも前に進まなきゃいけない時は誰にでもあり、
(私も少なからず経験してます)
その経験は仕事にも連動して達成する事に変化をもたらします。
母子が離れている間、それぞれの思い出を共有するのでなく、
離れている間に何に影響され、どう成長したのか、2人の人間性を共有して欲しいと、自分を重ねて感じました。
イガリシノブ
Hair & Makeup Artist [BEAUTRIUM]
ママなんか行っちゃえ!怒鳴るステラに娘が重なりました。
果たされなかった約束を許し諦め、娘は成長。いつか私の葛藤を理解するでしょう。
言葉にしなかった約束も破った約束も、全てを背負って親も子も歩んでいく。
大塚聡子
NEC宇宙システム事業部/日本ロケット協会・宙女
厳しい試験や訓練、世界中からの期待といったプレッシャーや、
大切な人と星ごと離れ離れになる寂しさも乗り越え、
成果を残してきた宇宙飛行士の偉大さを再認識させてくれる映画でした。
宇宙ヤバイchキャベチ
youtuber
お会いした宇宙飛行士の方々は、完全無欠に思えました。
でもきっとそれぞれ悩みを抱えながら、宇宙へと飛び立っていたんですね。
宇宙飛行士になりたい自分にとって、“観なければならない”映画でした。
黒田有彩
タレント
子供の目に働く親が常にかっこいいとは限らない。
約束も破るし、話しをする時間も無い。でも、常にお互いを思い合うと言う事で繋がっている。
働く姿を見せて子供を思うって、切なくもあり、美しくもある。
坂下千里子
タレント
宇宙飛行士としてのキャリアと母としての役割、
その両立で葛藤する主人公エヴァ・グリーンの美しい演技に感嘆。
何事にも全力で向き合う姿は、時にもどかしくもたくましく、果敢に今を生きる私たちの背中を押してくれる。
篠原ともえ
デザイナー/アーティスト
仕事のこと、家庭のことで壁にぶつかったときに諦めずに頑張るためのヒントがたくさん入っているので、
夢を追いかける人の背中を押してくれる作品です。
白石紀子
JAXA/日本ロケット協会・宙女
セクハラ男やパワハラ男をも味方にし、元夫とも良好な関係を築いて、着々と夢を実現する主人公。
唯一コントロールできないのが娘の気持ち。
宇宙への旅と、娘の心の宇宙を、忖度なく必死で守ろうとする姿がすばらしい。
田嶋陽子
女性学研究者・元法政大学教授
親と子、夢と現実の間でもがく二人の葛藤が、
宇宙と地球という絶対的な隔たりによって残酷なまでに際立ち、心に深く突き刺さる。
数多くの宇宙飛行士を送り出してきた訓練施設やロケット発射場の美しい風景が、物語を慈しむように彩る。
鳥嶋真也
宇宙開発評論家
子育てをしながら働く女性であれば誰もが体験する母と子の繋がりの物語。
自分の夢も娘も大切な宝物。仕事をしながら大切な家族を守っていく姿に元気をもらえる映画だ。
永田美絵
コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員
成長する少女ステラの表情がとても印象的。
人を大切に想う気持ちは、目に見えなくても、
耳に聴こえなくても、お互いを信じていれば、
心に届くものなのでしょう。
姫野武洋
東京大学/日本ロケット協会・理事
日々の生活や子供を育てること、と同列に宇宙で働くことがある。
映画でそれを描いてくれてありがとう。
矢野顕子
ミュージシャン